第24章 【ネコトイヌ】
「……!……璃音!」
お母さんの呼ぶ声で我に返る。
どうしたの?ぼーっとして、そう心配そうな顔でお母さんが私の顔をのぞき込む。
「昨日も夜遅くまで起きていたみたいだけど……ちょっと頑張りすぎなんじゃない?」
週末の間、ずっと部屋にこもって英二くんのDVDを見ていた私を、勉強していたと思い込んでいるお母さんに、ごめんなさい、そう心の中で頭を下げる。
もちろん、やるべきことはやったけど、それでもDVDの中の英二くんはとても格好良すぎて、見ていないときでもそのプレイが瞼のすぐ裏で再生されては何度もエンドレスで繰り返すから、やった勉強の内容なんて全然頭に残ってない。
勉強だけじゃなく他のことも何も手につかなくて、ずっと英二くんのことばかり考えていて、それから夜も眠れなくて、気がついたら月曜日の今日になっていた。
「今日から朝練で早く行くんでしょ?やっぱり委員の掛け持ちは大変なんじゃない?」
そんな風に私の心配をしてくれるお母さんを安心させようと、もうすぐ両方終わるし問題ないよ、そう言って笑顔で朝食を口に運ぶと、委員と言えば……そう不二くんに勧誘された生徒会執行部のことを思い出す。
不二くんはあれ以来、そのことについて口にしないけど……口にしないって事は諦めてくれたって事でいいんだよね……?そう思いながら時計に視線をむける。
するともう家を出ないといけない時間が迫っていて、あ、もう行かないと、そう慌ててごちそうさまをすると、洗面所に向かってさっき整えた身なりの再確認をする。
玄関で靴を履いて行ってきますとお母さんとネコ丸に挨拶をして家をでる。
空を仰ぎながら、英二くん、ちゃんと朝練来るかな……?そうLHRで朝練なんてやだかんな!って大騒ぎした英二くんを思い出しながら頬を緩める。
そして次の瞬間、今度は昇降口で私を無視した英二くんの背中が頭をよぎり、今日はちゃんと話してくれるといいんだけれど……そうふーっとため息を落とした。