第23章 【エイジトテニス】
「それではこれから学年ごとに別れて作業になります。一、二年生は外倉庫、三年生はここに残ってください。それでは倉庫当番のクラス委員さん、よろしくお願いします」
そう委員長の言葉にみんなそれぞれ移動を始める。
見つからないようにそっと離した手にやっぱり寂しくなってしまい、そんな私の気持ちを見透かしたように英二くんはニヤリと笑うから、そっと頬を膨らませた。
「あ、入場門はこっちです。その箱は万国旗なので前日までそのままで……」
外倉庫に移動すると、倉庫当番の私と英二くんは二学年担当になっていて、みんなに指示を出しながら大道具の準備をしたり、競技に使う道具を用意したりする。
と言っても指示を出しているのは私だけで、英二くんは他のクラスの委員達と楽しそうに談笑しながら準備していて、雑談と準備、どちらがメインが分からない状態なんだけど。
「菊丸くん、遊んでないでちゃんとして下さい、私達、倉庫担当だから一応責任者なんですよ?」
そう言う私に英二くんは、ほいほーいと返事だけは立派?なんだけど、結局、なにも変わらなくて、こう言う地味な作業の時は気分が乗らないんだろうな、なんてこっそり苦笑いをした。
「菊丸くん、障害物競走に使うものだと思うで、この箱、上から下ろして中身を確認したらこちらに移動して貰えますか?」
そう言う私の指示に、英二くんはこれー?っと快く応じてくれて、棚の上の段ボール箱をひょいっと持ち上げる。
その瞬間、英二くんの身体がピクッと固まり、不思議に思ってどうしたんですか?と問いかける。
「んー……べっつにー、思ったより重いよん?」
箱を下ろしながら英二くんがそう言うから、すみません、なんて慌ててその箱に手を添える。
一緒に床に下ろしながら、障害物競走で使う箱だから、おそらく中身はテニスラケットとボールだろうけど、確かにまとまった数が入ってたら重いかな?
なんて思ったところで、私は自分が大変なミスを犯したことに気がついた。