第22章 【カベノムコウ】
放課後になり委員会に向かおうと英二くんに視線を向けると、沢山の友達と楽しそうに談笑中で、とても話かけれる雰囲気じゃないな、そう思ってひとり教室を後にする。
英二くん、遅れてこないといいのだけれど……そうくじ引きすっぽかし事件?を思い出しながら会議室へと向かうと、後ろから小宮山さーんっと声をかけられる。
その声にドキッと心臓が跳ねあがり、振り返ると教室でみせる屈託のない笑顔の英二くんが走ってきて、私の横にならんで歩き出す。
先ほどの教卓の下でのことを思い出し、2人の間にとられた距離に少し寂しく思いながらも、人の目が多い時間帯と場所での行動だから、失敗しないように気をつけないと、そう気持ちを引き締める。
「委員会、行くなら声かけてくれれば良かったのにぃ!」
「お話し中でしたので」
「んなこと言ってオレが遅れたらどうしてくれんのさ?」
「自己責任です」
2人距離をとって歩いていると、人気者の英二くんだけあって次から次と声をかけられていて、そして満面の笑みで彼はそれに答えていて、それから明らかに場違いの私に対して、なんだこいつ?と言うような視線が集まる。
失敗しないように気合いをいれたことと、その集まる視線が痛いのとで、まるで最初の頃のような、必要以上にぶっきらぼうな会話になっていまい、内心苦笑いしてしまう。
ふと北校舎の階段にさしかかったところで、一瞬人気がなくなったと思ったら、英二くんがすっと私との距離を詰めてきたから、え?って思って彼を見あげたその瞬間、フワッと私の唇に英二くんの唇が落ちる。
一瞬だけ触れた唇の感触と鼻に残る英二くんの整髪料の香りに、胸がきゅうんっと高鳴り、ギュッとノートを抱きしめる。
今日は本当になんなの……?
それから熱い頬を膨らませてそっと英二くんを見上げると、ちょっと戸惑った顔をした彼はキョロキョロと辺りを見回して、もう一度誰もいないことを確認すると、私の手をグイッとひいて階段下の物置へと飛び込んだ。