第21章 【カワッタコト】
「んじゃ、小宮山さんが書いてんのが体育祭の競技ねー、参加は自由だけどさ、せっかくだからみんなどんどん参加してちょ!」
LHRの時間になり体育祭の出場種目決めをしていて、実行委員の私たちは2人で前に立ち、司会進行をしている。
なんでもない顔をしてみんなの前で委員の仕事をしている私達が、実はセフレ同士だなんて誰も想像しないだろうな、なんてこっそり思う。
クラスで話し合うときは、自然と司会が英二くん、私が板書という役割分担になる。
英二くん曰わく、作られたキャラらしいけど、やっぱり彼はクラスのムードメーカー的存在で、人気も人望も厚いし、クラスの意見を一つに纏めるのも上手。
たとえ同じことを話したとしても、私だと非難轟々になる場合でも、英二くんに掛かってしまえば、みんなを自分のペースに巻き込んで、それから体育祭へむけて一気に志気を高め盛り上げていってしまう。
まあ、気まぐれで脱線しやすい所は玉にキズだけれど、そう言うところもクラスの雰囲気を和ませる要因になっていいのかもしれない。
だからうちの学校の体育祭は参加フリーの自由なものなんだけど、英二くんの呼びかけでみんなが何かしらに参加を希望しているんだから凄いと思う。
本当、学級委員の方の司会進行まで手伝ってくれたらどんなに楽か、そう次から次とスムーズに決まっていく内容を板書しながら、心の中で苦笑いする。
そもそも、学級委員の男子がもっとちゃんとしてくれたら苦労しないのに……って、だいたい、うちのクラスの男子委員って誰だっけ?
あまりにも仕事しないから、ダメだ、こいつ使えないって思って、もういないものと考えて全部私がしている間に、今では先生まで男子委員の存在を忘れたのか、当然のように私にだけ仕事を振るのよね。
「……さん、小宮山さんってば!」
そう英二くんが私を呼ぶ声で我に返る。
あ、すみませんっと謝りながら振り返ると、英二くんは、小宮山さんがぼーっとするなんてめっずらしー、そう言ってにぱーっと可愛く笑った。