第21章 【カワッタコト】
「小宮山さん、おっはよー!」
教室の自分の席で本を読んでいると、教室に飛び込んできた英二くんのその声に、おはようございます、そうそっと微笑んで答える。
「今日って放課後、委員会あんだっけ?」
「はい、会議室で打ち合わせの後、2学年役員は外倉庫に移動して道具準備です」
「ふーん……なーんか最近忙しくなってきたよにゃ?」
「体育祭も目前ですから、今日はLHRにクラスの出場種目決めもあります」
そう事務的な会話をしていると、英二!こっちきてーっと女の子達から声をかけられ、ほいほーいっと英二くんはその和へとむかっていく。
「ねぇ、小宮山さんと何話してたの?」
「別に?委員会の話」
「英二、前も委員会って言って小宮山さんの相手してたよね!」
「そーだっけ?わすれちった」
「そうだよ、いつも可哀想ー、立候補なんかするからこんなことになるんだよー?」
「はは、でも思ったより楽しいよん?」
彼女達の言う「可哀想」って、英二くんが委員会で忙しいのが可哀想なのか、それとも私と一緒だから可哀想なのか、はたまたその両方か……
ふと浮かんだそんな疑問に、まあ別にどれでもいいんだけど、そう内心ため息をつきつつまた本に視線を戻す。
会話の内容はともかく、英二くんの声を盗み聞きし、それからこっそり視線でその姿を追いかける、そんな以前と何も変わらない朝の日常にそっと幸せを噛みしめた。