第115章 【ミライへ・・・】
遠くから聞こえる子供たちのはしゃぎ声。
サワサワと戦ぐ風が髪を揺らす。
乱れた髪を耳にかけながら、ああ、もうすっかり春だな、なんて手元の本から視線を上げて、東屋の先の木漏れ日の向こうの光に目を細める。
「・・・お父さん、残念そうにしてたよ?ソラとやりたくてテニスラケット持ってきたのに・・・」
「・・・今日はそんな気分じゃないから。」
相変わらず外に来てもベンチで本ばかり読んでいる我が子に、それなら仕方がないけどね、なんて呆れ気味に苦笑いをする。
久しぶりの家族での休日・・・
せっかくだから、と外に連れ出したはいいけれど、気が乗らないのでは無理強いも出来なくて・・・
お父さん、いっちゃうぞー?と引き止めてほしそうに何度も振り返りながらテニスコートへと向かった英二くんの寂しげな背中を思い出し、クスクスと笑う。
「お母さん、お父さんのテニス見たかったのになー・・・」
「お母さんも行けばいいじゃん・・・別に僕1人でここにいるから・・・もう小さな子供じゃないんだし。」
「そんなのだーめ、ソラが行かないならお母さんも一緒に本読んでる。」
ふーん・・・そう興味無さそうにまた本に集中してしまった息子に、相変わらずドライね・・・なんて言いながら、その外ハネをゆっくりと撫でた。
♪~
バッグの中の携帯電話が着信音を鳴らし、そのディスプレイに頬を緩ませる。
もしもし?、一呼吸置いて通話マークをタップする。
『あ、璃音ーー!出た、良かった!!私、私!!』
「はい、分かってますよ、美沙。」
懐かしい大好きな声、相変わらず元気を分けてくれる・・・
あの頃から何も変わらない・・・
「璃音!!」
英二くんと再会したあの時、その日は両家にご挨拶したりしてバタバタして過ごして、次の日、英二くんに連れられて行ったかわむら寿司で、英二くんの仲間たちと一緒に懐かしい美沙に出迎えられた。