第112章 【ソラ】
「ソラ?・・・どこ・・・?」
冗談でしょ・・・?、そんなふうに思いながら、ソラの上着を手に取り辺りを見回す。
ソラは冗談で隠れて私を脅かしたりするような、子供らしい一面は皆無だし、ましてや、突然何も言わず勝手にどこかに行ってしまうような、好奇心旺盛な一面も全くないのに・・・
だったら、どうしてーーー???
ドクン____
本当に、なんでいないの?
もしかして、誰かに連れていかれた・・・?
ううん、ソラは子供らしからぬ性格だから、警戒心はちゃんと持ってる。
もし無理矢理連れていかれそうになったのなら、ちゃんと大声を上げるだろうし、いくら他のお母さんと話をしていたからって、全く気が付かないなんてありえない。
ドクン、ドクン____
どうしよう・・・ソラ、日本に来てからまだ携帯もGPSも持たせてない・・・
警察・・・?いや、いくらなんでもまだそこまでは・・・
ああ、なんで私、全然気が付かなかったんだろう・・・
他のお母さんと話しをしていてほんの少し目を離した隙に、なんて事が実際に起こるなんて・・・
落ち着け、大丈夫、そう自分に言い聞かせながら、震える心臓をギュッと抑え込む。
本当にどうしよう・・・このまま見つからなかったら・・・
私、約束したのに・・・英二くんと別れると決めた時に、勝手にだけど英二くんと約束したのに・・・
ソラを一人で立派に育ててみせるって、約束したのに・・・
「・・・ソラー?・・・」
震える声でソラの名前を呼ぶ。
お願い、早く戻ってきて・・・?、大声を出すのは得意ではないけれど、当たりを見回しながらもう一回・・・
「・・・お母さん・・・」
小さく聞こえたその声に、ハッとして振り返った。
良かった・・・本当に・・・
安心したら、ずっと堪えていた涙が頬を伝った。