第19章 【フジトエイジ】
「英二、屋上に行こうか?」
昼休みになると不二が教室に現れてオレの机の前に立ちはだかる。
やはり立ちはだかるか、不二周助!!
その笑顔の後ろから滲みでる黒いオーラが、オレの身体をジワジワと攻撃してくる。
「あー……そ、だね」
そう顔をひきつらせながら立ち上がると、そんなオレらの様子を、小宮山が本に隠れて心配そうに見ている。
なんでもない顔をして小宮山の前を通る際に、机の上をこっそり作ったブイサインでそっと触れながら通り過ぎた。
屋上につくと不二が立ち入り禁止の立て札をドアの前に立てかける。
いったい何処からだしたんだよ!?そう突っ込みながら中に入ると、さあ?何処だろうね?そう不二はクスッと笑った。
百足観音か!?百足観音の門番か!?
オレはもう二度とこの屋上から出られないのか!?
そう身震いをしながら急いではしごを登ると、膝を抱えてうずくまり、ごめんなさい、ごめんなさいとブルブル震える振りをする。
「……英二、そんな演技はいいから、ちゃんと僕に話すことがあるだろう?」
そう低い声で言う不二に、あ、バレたー?そう下を覗いて笑うと、仕方がないな、そういう顔で不二は笑った。
「ほんと、悪かったって……」
いつものように後頭部で手を組んで仰向けになり空を仰ぐ。
不二はうつむき気味にポケットに手を入れて、横の壁にもたれ掛かる。
「小宮山さん、いったいどうしたの?」
「それは……小宮山がオレを好きだから?」
「僕が聞いているのは、どうして彼女が僕にあんな真似をしたかってことだよ?」
下から感じる圧力にまた怯んで、不二、怒るから話したくない、そうぽつりと呟くと、言わないともっと怒るよ?そう不二の笑い声が聞こえ首をすくめる。
「……初めから?」
「当然」
「絶対、怒んない?」
「内容による」
「じゃ、ヤダ」
「ふーん?そう、分かったよ」
そう言って不二は出て行こうとするから、分かったって、全部話すよって慌てて不二を止める。
なんだよこのバカップルな会話、そう苦笑いすると覚悟を決めて、オレは重い口を開いた。