第112章 【ソラ】
あ、この先生の新刊入荷してる!
うわー、これも欲しい!こっちも!!
でもさすがにこんなには持って帰れないかな・・・
あとでネット通販で買う?でもすぐ読みたいし・・・
「Mom, still?」
「Sorry, wait a little longer?」
お母さん、まだ?、そう面倒くさそうにしているソラに、もう少しだけ待って?と謝り棚の本を選ぶ。
「I've already chosen・・・」
僕、もう選んだのに・・・そう不満げにするソラの腕の中には【家庭の医学】・・・
ま、まぁ、読みたいならいいけどね・・・、そう5歳児らしからぬチョイスに苦笑いした。
「ねぇ、あの子、ムンラの英二に似てない?」
「えー!!どれどれ!?」
「ほら、あの英語喋ってる・・・」
ハッとして慌ててソラの帽子の鍔をグッと下げる。
チラリとその会話の主たちに視線を向けると、やばって気まずそうな顔をして移動していく。
別に似ているだけで、本当に英二くんの子供だと分かってしまうことは無いだろうけど、何がきっかけでバレてしまうか分からない。
もしそんなことになったら、英二くんにすごい迷惑かけてしまう。
第一、英二くんに見つかる訳にはいかないんだから、出来るだけ目立たず生きていかなきゃ・・・
「・・・ソラ、ここは日本だから、お外では日本語話そうか?、お家ではソラが好きな言葉でいいから・・・英語でもフランス語でもドイツ語でも・・・」
他のお客さんの邪魔にならない場所でそう言い聞かせる。
目立つしね、なんてすぐに納得して頷いてくれるソラをギュッと抱きしめる。
大人の事情で自由にのびのびとさせてあげれなくて申し訳なく思う。
こんなんだったら、日本に戻ってこなければ良かったのかな・・・
でも、やっとお父さんが本社に戻ってこれることなったのに、お父さんとお母さんだけ帰って、なんて言えないもん・・・
ソラにだって祖父母の愛情は大切だし、私の仕事だって日本にいた方がずっとスムーズだし・・・