第18章 【メバエタオモイ】
「不二、説教なら後から聞くからさ、今は小宮山と話させてよ」
静かな屋上に唯一響いていた私の泣き声と謝罪の言葉は、そう言った英二くんの声によってかき消された。
英二くんから話……?
そう思うと身体がビクッと大きく震え、慌てて顔を上げて英二くんの顔色を伺い見る。
「これは説教なんて生易しいものじゃ済まされないよ?」
そんな私を見た不二くんはそう英二くんに声をかけ、それから、小宮山さん、あまり無理しちゃダメだよ、そう優しい声で私に言うと、そっと私の頭に手をおいて屋上を後にした。
そんな不二くんを見送りながら、英二くんは首をすくめると、しゃーねーか、と苦笑いをする。
「……小宮山」
不二くんが出て行った屋上の扉が閉まると、そう英二くんが私を呼んだから、もう一度身体がビクッと跳ねる。
2人きりになった途端、少し低くなったその声と雰囲気に、心臓がバクバクして身体がガクガクと震えだす。
「ごめんなさい、私、もう泣かないから、ごめんなさい!!」
どうしよう……英二くん、やっぱり怒ってる?
そんな不安と恐怖から、何度もゴメンなさいと繰り返し、必死に涙を拭い堪える。
やだ、今度こそ、もういらないって言われちゃう!
お願い、言わないで、私、何でもするから言わないで!!
「小宮山!」
「お願い!私、何でもするから!」
「小宮山!!」
「だからいらないなんて言わないでっ!!」
私に何かを言おうとしている英二くんの言葉を、必死に何度も遮ると、土曜日と同じように、耳をふさいでギュッときつく瞳を閉じる。
「いいから聞けって?」
「イヤッ!聞きたくないっ!!」
そう叫んだ私の瞳からは、堪えきれなくなった涙が後から後から溢れ出し、そして頬を伝って流れ落ちた。