第106章 【フユゾラ】
洗面台に映る自分を眺める。
大好きな歯磨きをしても、ちっともスッキリしない。
外ハネが上手く決まっても、ぜんぜん気持ちが跳ねあがらない。
「・・・情ねー、顔・・・」
鏡の中の自分に向かって毒を吐く・・・
ガラッと勢いよくドアが開いて振り返る。
そこには下のねーちゃんが立っていて、オレの顔を見るとその顔を固まらせる。
「あ・・・」
なんて声をかけていいか戸惑っていると、ピシャリと閉じたドア・・・
当たり前だよな・・・あんなことしたんだから・・・
無理やりねーちゃんにキスをしてから、もうねーちゃんとはずっとこんな状態が続いていて・・・
同じ家に住んでいるんだから、どうしても顔を合わせることになるんだけど、その度に気まずい空気が流れて・・・
ねーちゃんに勢いよく閉められたドアを開けてキッキンへと向かう。
そこにはいそいそと朝食を作るかーちゃん・・・
英二、おはよう、そうオレに気づいて力ない笑顔を見せる。
「・・・うん・・・」
おはようの代わりに、最低限だけうった相槌・・・
気まずいのは下のねーちゃんとだけじゃない。
かーちゃんや他の家族とも同じで・・・
耐えられず、無言でトーストを咥えるとキッチンをあとにする。
「英二、お弁当は・・・?」
「・・・いんない・・・」
「・・・でも、それじゃ・・・」
「いい、なんかテキトーに食うから・・・」
玄関先で靴を履くオレに、かーちゃんが戸惑いながら声をかける。
だけど視線すら合わせず、最低限に答えて玄関のドアを閉める。
キンと冷える冬の空気・・・
澄んだ空気でよりいっそう青く輝く空・・・
はぁ・・・、ため息があたりを白く染める。
オレがねーちゃんに手を出したことを、ねーちゃんは何故か家族には話さなくて・・・
だけど、何も無かったことには出来なくて、気まずい空気はすぐに家族に気が付かれて・・・