第17章 【ユウワク】
「不二ぃ、オレに負けない自信があるって言ってたけど、オレの方がだんぜん経験値、高いんだかんなー?」
私が乱した制服を直す不二くんに、英二くんが思い出したかのようにそう頬を膨らませて言う。
「クスッ、英二の持っている経験値なんて、ただみっともないだけじゃないか」
そう不二くんがクスクス笑って答えると、英二くんは黙って首をすくめる。
そんなやり取りを眺めながら、いったい何が起きたのか、いまいち理解し切れていなくて、必死にこの状況を考える。
そう、英二くんのお願いをかなえるために必死に頑張って、それで不二くんのベルトを外そうとしたら、上から英二くんの学ランが降ってきて……
上から……?
もしかして英二くん、この上にずっといたの……?
慌てて入り口の上のスペースを見上げる。
この上から不二くんとのやり取りをすべて見られていたのかと思うと、恥ずかしいのとみっともないのとで、顔が真っ赤になると同時に、どうしようもないほど胸が痛んで涙が溢れた。
こんなの、キスの時よりずっと辛いよ……そう思うと立ってはいられなくて、思わずその場にうずくまり、震える身体を両手で抱きかかえる。
見ていたんですか……?そう小さい声で問いかけると、私の状況に気が付いた2人が、あっと慌てて私に駆け寄ってくる。
「見てない、見てない!小宮山、オレなーんも見てないぞー、小宮山が不二を誘惑するところなんて……ああっ!」
そう言って慌てて口を塞いだ英二くんは、不二くんに抱きついて、不二ぃー、どうすんだよ、小宮山泣いちゃったじゃん!そう慌てて助けを求める。
「不二が小宮山連れてきたんじゃん!オレがいるの分かってたんだろ!?」
「……僕のせいだって言うの?」
「ひぃっ!!オレが悪いんです!!小宮山、ごめんなさい!!」
そんな2人のやり取りを聞きながら、ひたすら首を横に振る。
違うんです、ごめんなさい……そう何度も謝りながら、しばらくその場で泣き続けた。