第104章 【ホウカイ】
「・・・もしその話が本当だとしても、あんたに原因があるに決まってるでしょ!、それに関係ない子まで巻き込むんじゃないの!」
浮気したのは小宮山だって言ったのに、まだ小宮山じゃなくオレを責めるねーちゃんに、完全にカッとなった。
関係ない?、だったら、関係あるやつならいいのかよ?、そう思いっきり嘲笑った。
「そんじゃ、代わりにねーちゃんが相手してよ?、小宮山の浮気相手、ねーちゃんの好きな不二だよん?」
わざわざ、相手が不二だってこと、ねーちゃんに言う必要なんかないのに・・・
いんや、それよりも、よりによって、ヤラせろ、だなんて・・・
だけど、やっぱ暴発した気持ちは止まんなくて、ねーちゃんの手首をつかむと、強く引っ張り無理やり唇を重ねる。
「・・・ふざけっ・・・!」
ガリッと走った強い痛み・・・
次の瞬間、オレの手を振り払い、ねーちゃんがキッと睨みつける。
すげー怖い顔をして部屋から出ていったねーちゃんの背中を眺めながら、ふつう噛むかよ、そうボソッと呟く。
さすが菊丸家の女、気ぃ強えぇ・・・そう親指で唇に滲んだ血を拭うと、ははっと乾いた笑い声をあげる。
これでおしまいだ・・・
よりによって、兄弟同然に育ってきたねーちゃんに手を出すなんて・・・
仲の良い菊丸家には、いつだって隠し事なんかなくて・・・
きっと、今回のことも、ねーちゃんの口から他の家族たちに、あっという間に筒抜けになるに決まっていて・・・
もうこの家になんかいらんないよな・・・
実の娘が被害にあったんだ、養子を放り出さないはずがない・・・
そうなったら、オレ、どうなんだろ・・・
この歳じゃ、今更、施設ってこともないだろうし・・・
・・・あの女のところに、返されるのかな・・・?
それだけは、死んでも嫌だな・・・、慌てて大五郎を抱きしめると、ギュッと顔を埋めてうずくまる。
「どこにやられることになったって、お前だけは一緒だかんな?」
ポツリと呟くと溢れる涙を大五郎が受け止めてくれた。