第102章 【サクジョ】
「ほんじゃ、学校行ってくんね」
「はいはい、気をつけていくのよ?」
17歳になった次の日。
何も変わらない朝、何かが違う朝……
「あ、英二、今度、本当に璃音ちゃん連れてきなさいよ?、昨日は残念だったから……」
玄関を開けてわざわざ呼び止めるねーちゃんの声に、ピタリと足をとめる。
昨日の夜は家族が例年通り盛大に祝ってくれて……
すげー嬉しかったんだけど、やっぱ小宮山がいないのが寂しくて……
付き合って初めての誕生日なのに、断られたことが悲しくて……
それから、夜も電話するって言ったのにそれすら断られて、諦めきれなくて電話したけど、やっぱ出てくんなくて、朝のLINEにも返信がなくて……
小宮山はさんざん謝ってくれたけど、それでも何となく違和感が拭えなくて……
だって、ここ数日、小宮山の様子が明らかにおかしかった……
オレと一緒にいても、授業中でさえも、ぼーっとしたり、ため息をついたり……
なんかあった?って聞いても、慌てて何も無いですよ?って誤魔化されて……
そんな小宮山の様子に、もしかしたら、もうオレのこと好きじゃなくなったんじゃないかって、そんなありえない考えすら胸をよぎって……
大丈夫だって、小宮山が心変わりなんかするはずないじゃん?
あの小宮山が……
いつだって、オレのことをあんなに想ってくれている小宮山が、オレを好きじゃなくなることなんか……
それに万が一、もしそんな日が来たら、小宮山はちゃんと打ち明けてくれる……
嘘つかないって、隠し事しないって、何度も約束したんだ……
「ちょっと、英二、聞いてるの!?ちゃんと待ってるって伝えてよ!」
「……ん、いつ来れるか聞いてみんね?」
不安な思いを笑顔に隠すと、昨日、小宮山から貰ったイヤホンを耳にセットする。
携帯を操作してチョコレーツの一番お気に入りの曲を流すと、そのまま学校へと走り出した。