第101章 【ハツユキガフッタヒ】
ブブッと机の上で震えた携帯電話。
通知窓に表示された英二くんからのLINE……
おはようの文字から慌てて目を背ける。
昨日の夜も、いつもの時間になった着信音……
出れないかもしれないからって断っていたのに……
やっぱり英二くんと向きあえる自信がなくて、通話を受けることが出来ず無視してしまった。
だからこそ、このLINEにはちゃんと返事しなきゃ……
そう思うんだけど、やっぱりどうしても返信することが出来なくて……
携帯を元の位置に戻すと、ドレッサーに移動し鏡に映る自分を眺める。
制服の襟元をそっと下げるとクッキリと残る赤い痕……
はぁ……、深い、深いため息を落とす。
大丈夫、あの男の人に無理やりつけられてしまったけれど、幸い、服の上からは見えない位置だし……
いつもよりギュッとキツめにリボンを結んで、絶対見られないように隠した。
「行ってきます、お母さん、ネコ丸……」
玄関を開けた途端、ビュンと突き刺す冷たい風……
寒い、思わず身体を縮こめると、はーっと手のひらに白い息を吹きかける。
そう言えば、今シーズン最大の寒波だって言ってたっけ……
どうりで……、朝の天気予報を思い出しながら、どんよりとした曇り空を眺めた。
校門をくぐり抜けると、足取り重く教室に向かう。
カタリと通学カバンを机に置くと、隣の英二くんの席に視線をむける。
いつも通りなら、英二くんが来るまでにまだだいぶ時間があるはずで……
英二くんが来たら、ちゃんと笑っておはようって挨拶しなくっちゃ……
それから、昨日、ご自宅に伺えなかったことを謝って、あとLINEに出れなかったことも……
机に教科書類をしまって席に着くと、いつものように本を取り出し視線を落とす。
大丈夫、大丈夫、そう不安でいっぱいの自分に何度も言い聞かせた。