第99章 【マコト】
「英二くん、はい、これ……お誕生日おめでとうございます」
11月28日____
今日は英二くんのお誕生日当日……
放課後、いつもの公園の東屋で英二くんにプレゼントを手渡す。
「あんがと、開けていい?」
「あ、はい……気に入っていただけるかは、分かりませんけど……」
手渡したばかりの包を、キラキラと目を輝かせながら英二くんがのぞき込む。
おー、イヤホンじゃん!、そう嬉しそうに中身をとりだすと、すぐに携帯に取り付け音楽を聴き始める。
音楽に合わせて鼻歌を歌うそのご機嫌な横顔を、目を細めながら眺める。
良かった……喜んでもらえて……
英二くんはいつも移動中にイヤホンを使って音楽を聞いているから、これなら実用的でいいかな?と思って選んだんだけど……
「すんげー、いい音!、これ、高かったろ?」
「いいえ、それほどでも……でも、やっぱり音って違うんですか?」
「うんにゃー!全然違うよん!……小宮山も聴いてみる?」
そう言って英二くんは片方の耳からイヤホンを外して、私の耳へと優しく差し込んでくれる。
その分、近くなったふたりの距離……
そのまま、英二くんの顔がもっと近づいてくる。
ふわりと重なった唇……
聞こえている曲に負けないくらい、甘い、甘いキス……
ゆっくりと唇が離れると、眉を下げた英二くんが私の顔をのぞき込む。
その寂しそうな表情に、ズキンと胸が痛んで苦しくなる。
「ね、小宮山……やっぱ、このまま小宮山んちにいっちゃ……ダメ?」
「……申し訳ありません……」
本当は私だって、英二くんと一緒にいたい……
約束通り、このまま私の家に一緒に帰って、思いっきり抱きしめてもらいたい……
その後、英二くんのお宅にお邪魔して、家族の一員として認めてもらえる喜びも噛み締めたい……
だけど、私は英二くんを守らないといけないから……