第95章 【ソラニウカブ】
「ねえ、お母さん!この服、どう?、おかしくないかな?」
「……璃音、いくら何でも、まだ早いでしょ?、英二くんが迎えに来るの、10時って言ってなかった?」
朝食の準備で忙しい朝のキッチン、その中心でくるりと回る。
そんな私にチラリと視線を向けたお母さんは、全く、もう、そう苦笑いで返事する。
「それはそうなんだけど、でも……」
「璃音はいつからこんな、おバカちゃんになったのかしら?」
今日は二日目の学園祭振替休日。
昨日、英二くんとたくさん話し合って、今までの分も本当にいっぱい……
その時、英二くんがそう言えば……って気まずそうに財布からお金を取り出して……
なんだろ?って思って見てみたら、それは不自然なシワになっていて……
「あ、あの、これ……?」
「ん、これさ……あん時、小宮山が置いてった……ラブホに……」
ハッとして英二くんの顔を見た。
それは確かに私があのカラオケ店であの男の人たちに乱暴された時、助けてくれた英二くんに連れていかれたラブホテルに、こっそり置いてきた金額で……
「あ、あの、あの時は申し訳ありませんでした、私、お礼も言わずに帰ってしまって……その、足りませんでしたか?」
「そうじゃなくてさ……オレ、こんなの、受け取れない……」
受け取れないと言われても……
英二くんは前にラブホ代は男が出すって決まってるって、私には尚更出させるわけにはいかないって言っていたけれど、それでも、あの場合は、私のために仕方なく行くことになった訳で……
ましてや、下着代や服代も……サービスなんてきっと嘘だもん……
「えっと、でも、あれは私のせいなので……」
「オレのせいじゃん!、小宮山、怒って黙って帰っちゃったし、その後だってずっとオレのこと避けて……当たり前だけど……」
「ち、違います!、怒っていた訳じゃ……ただ、恥ずかしくて……」