第91章 【シアワセナヨル】
みんなもう、自室へと向かって静まり返ったダイニング。
携帯を眺めながら、まだか、まだかと小宮山を待つ。
夕食後、小宮山の夕飯の後片付けがやっと終わったと思ったら、ねーちゃんたちに連れていかれて、なかなかオレの部屋に来てくれなくて……
やっと来てくれた!と思ってドアを開けて、そのまますぐに飛びつこうと思ったら、あ、英二くん、ダメです!、そう慌てる小宮山に止められて、何でだようって思ったら、湯のみに淹れたお茶を持っていて……
「……これ、どったの?」
「お母さんに淹れてもらったんです、さっきまでお父さんとお母さんとお話してて……」
ねーちゃんたちの次はとーちゃんとかーちゃんに捕まってたのかよー!、なんて苦笑いしながら部屋に招き入れると、テーブルにトレイを置いた小宮山は、少し考えてからオレの正面へと腰を下ろした。
やっぱ、そこに座るわけね……
オレとしてはすぐに抱きしめてくっついてたかったんだけど、小宮山は相変わらず恥ずかしがっていて……
なんか、湯のみで日本茶なんて、おもいっきりまったりしちゃって、しかも、茶請けがよりによって煎餅で、ポリポリの音に完全にイチャイチャする雰囲気じゃなくなって……
にゃろう、このチョイス、かーちゃん、わざとじゃねーの?、なんて不貞腐れながら、バリッと煎餅を思いっきり音を立ててかじった。
「……あの、英二くん……英二くんのご家族って、皆さん、とても素敵ですよね……」
そんな中、ほう……っと小宮山がため息をつきながらそう呟く。
そうー?、小宮山のかーちゃんのほうがずっとすげーじゃん!、尊敬してんだろ?、なんて返事をしつつ、やっぱ、家族のことを褒められると悪い気はしなくて……
「それは、もちろんそうなんですけど……でも、英二くんのご家族にだって憧れます。大きくて、暖かくて……」
小宮山のことだから、絶対、社交辞令じゃないその言葉が嬉しくて、あんがとね、そう素直にお礼を言った。