第90章 【カンゲイ】
「いってー!ねーちゃん!なにすんだよっ!」
「あんたってやつは!、家ん中でなんてことしてんのよ!」
殴られた頭を擦りながら訴えると、顔を真っ赤にした小宮山は、慌ててオレの下から抜け出した。
ごめんね、小宮山さん、バカな弟で、そう言ってねーちゃんは小宮山の手を取ると、さ、夕飯できたから食べよー、なんて言いながら部屋を出ていく。
「あんたは罰として夕飯抜きね!」
「なんでだよっ!オレも食べるよっ!」
慌てて二人のあとを追うと、あんたはそのみっともないの、なんとかしてから来な!、そう言ってねーちゃんはオレの下腹部を指さすから、あー……と情けなくて苦笑いした。
「みんな、おまたへ〜♪」
何とかしてからオレもダイニングへと向かうと、もう既にみんなが席についていて、いつもの定位置がちょっとずつ詰められていて、オレと下のねーちゃんの間の席に明らかに緊張している小宮山が座っていた。
オレが来た途端、安心したように頬を緩めたから、その様子が嬉しくて自然とオレも笑顔になる。
「小宮山、もうみんなに挨拶した?、みんなー、これが小宮山ー、オレの彼女!」
「あ、あの、小宮山璃音です、ヨロシクオネガイシマス……」
小宮山が緊張しながらペコっと頭を下げると、もう私とお母さんで紹介したわよ、なんて言って下のねーちゃんが呆れ気味にため息をつく。
えー、そうなの?、そう少し頬をふくらませながら自分の席に付けば、相変わらず食卓はオレの好きなものがいっぱいで……
まだ仕事中のはずのとーちゃんも、一人暮らしの上のにーちゃんも、いつものように駆けつけていて……
「英二、もう大丈夫なのか?」
「あー、うん、とーちゃん、みんなも、いつも心配かけてゴメン、上のにーちゃんも……」
もっと強くなりたい……
みんなに心配かけないで済むように、発作なんか起きないように……
こっそりとテーブルの下で小宮山の手を握れば、小宮山は戸惑いながらもキュッと握り返してくれた。