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【テニプリ】闇菊【R18】

第87章 【ホットケナイ】




「菊丸くん、お家の人、すぐに来てくれるそうだから……それまでゆっくり休んでてね?」


不二くんたちと英二くんを保健室のベッドに寝かせると、養護の先生がカーテンから顔を覗かせて、そう優しい笑顔を見せる。
先生、いつもゴメン……そう英二くんが申し訳なさそうに頭を下げると、それが仕事だもの、そう言って先生はまた笑う。


「……小宮山さん、それまで傍に着いていて……って言われなくても離れそうにないわね」

「あ……すみません、その……はい」


先生の言うとおり、ベッドに横になってからも、私も英二くんも、お互い離れようとは思わなくて、ずっと英二くんの横に座ってその手を握りしめていた。


普通だったら人前で……ましてや薄いカーテンの向こうにはお母さんや不二くんたちがいるこの状況で、ベタベタするようなこと絶対したくないんだけど……
英二くんが苦しんでいるんだもん、そんなこと言ってられなくて……


そんな私たちの様子をチラッと確認した先生が、若いって凄いわね、そう苦笑いするとともに、でも大変よ……なんて複雑な表情を浮かべた。


その言葉の意味は、聞かなくてもすぐに理解できて……
先ほどの噂が、もう学園中に広まっているのは確実で……


私は何を言われても構わないけれど、巻き込んでしまった不二くんと、なにより鳴海さんに申し訳なくて……
鳴海さんに申し訳ないのは、噂に巻き込むことだけじゃないけれど……


そう思うと、これからの私たちを取り巻く環境がどう変わるのか、不安で仕方がなくなる。


それに……


不安なのは、それだけじゃない……


こうやって、英二くんと一緒にいたって、イコール、寄りを戻すと決まったわけじゃなくて……
お互い、気持ちは変わっていなかったと確認しあったって、だったら尚更、英二くんが鳴海さんを選んだのには、よほどの理由があるわけで……


その証拠に、英二くん、さっきから一言も話さない……


英二くんはこれから、どうするつもりなの……?
そんな疑問をとても声にできなくて、私も黙って英二くんの隣に座り続けた。

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