第86章 【トクベツナバショ】
「英二、とにかく保健室に……まだ動くのは辛いだろうけど、ここじゃ人目が……」
「……不二、いたの?」
「随分だね、小宮山さんと一緒に駆けつけてあげたのに」
ずっと私たちの様子を黙って見守ってくれていた不二くんが、すぐ近くに歩み寄り声をかける。
英二くんは余程苦しかったのか、一緒にいた不二くんには気がついていなかったらしく、2人で顔を見合わせながら苦笑いをする。
それから辺りを見回して、遠巻きに私たちを見ている生徒達の視線に気まずそうな顔をする。
それから、すぐ近くで立ち尽くしてる鳴海さんには、申し訳なさそうに目を伏せた。
私だって鳴海さんには悪いなって気持ちでいっぱいだったけど、それでも英二くんから離れたくなくて……
不二くんたちの肩を借りて保健室に向かう英二くんのすぐ後ろを、離れることなくついて行った。