第86章 【トクベツナバショ】
「皆さん、本当にご迷惑をおかけしました」
保健室から戻ると、クラスメイトに向かって深々と頭を下げる。
ううん、大丈夫だった?、小宮山にも苦手なことがあったんだな、そうクラスメイトたちは快く許してくれて、それから、俺たちの方こそさっきは責めるようなこと言って悪かったな、なんて、ばつが悪そうに謝ってくれた。
本当に私が悪かったのに、そんな風に気にさせちゃって、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
それから、そう言ってくれることがありがたくて、ありがとうございます、そうもう一度、頭を下げた。
あの大量の失敗作は、お母さんが教えてくれた通り、英二くんがロシアンタコ焼きにして、全部、完売してくれたらしい。
あんなに破棄して迷惑をかけるのが心苦しかったから、心からホッとしたと同時に、突然のアクシデントにも動じず、機転をきかせて乗り切ってしまうその英二くんの発想力と行動力に、改めてさすがだなって感心した。
「英二、凄かったよー!璃音が焼いたの、一個だけじゃなく、沢山入れてるのもあって、当たりが何個か分からないのも楽しいじゃん?って、どんどん売ってっちゃうの!」
「璃音が焼いた方を、ハズレって言わないところもいいよね、火傷してるのにも一番に気がついてさ、やっぱかっこいいよねー!」
改めて感心したのは私だけじゃないようで、クラスメイトたちも口々に英二くんを褒めていて……
だけどその一方で、いくら不二くんの彼女だからってあそこまでする?、なんて、やっぱり不審がる声もチラホラと聴こえて……
当たり前だよね……どう考えたって不自然だもん……
英二くんのあの行動は、ただのクラスメイトにする態度ではなくて……
ましてや、私は不二くんの彼女ってことになってるし……
すっかりクラスに打ち解けたといえ、もともと私のことをよく思ってなかった人たちがいるのも事実で、その人達からしたら、なおさら面白くないのは当然で……
別にそれで何か言われても全然構わないけれど、ないに越したことはないから、少し憂鬱に思ってため息をついた。