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【テニプリ】闇菊【R18】

第85章 【マドノムコウ】




「もう、先輩、大遅刻ですよ?」


すぐにオレの背中に腕を回して抱きついてきた芽衣子ちゃんに、ほんと、ゴメンな、って髪を撫でながら謝ると、彼女はくんっと鼻を鳴らして、たこ焼きの匂い?、そう不思議そうな顔をする。


「……ん、クラスの方でちょっとトラブってさ、どうしても抜けらんなくて……」

「……それって小宮山先輩が関係してます?」


芽衣子ちゃんの口から小宮山の名前が出て、思わずピクッと身体が反応する。
驚いてその顔を見ると、彼女は伺うような視線でオレの顔を見上げていて……


なんで、芽衣子ちゃんがここで小宮山のことなんか……
もしかして、芽衣子ちゃん、オレの本心に気がついてる……?
あ、えっと、焦る気持ちから咄嗟に言葉が出てこなくて……


「お待たせしてすみません、英二先輩、間に合いました!」


司会進行に向けた芽衣子ちゃんのその声に我に返る。
そうだ、何、固まってんだよ、本当に悟られちゃうじゃん!


ぐいっと芽衣子ちゃんの肩に腕を回すと、チュッと頬にキスをする。
ほんと、ゴメンな?、この後は気の済むまで付き合うからさ、そう言ってウインクすると、芽衣子ちゃんはもういつもの笑顔でオレを見ていて……


そんじゃ、いっくよん!、そう言ってステージへとオレ風のエスコートで飛び出した。







「グランプリはエントリーナンバー5番!鳴海芽衣子さん!ミス青学、おめでとうございまーす!!」


大歓声と拍手の中、芽衣子ちゃんが嬉しそうな顔で笑いかける。
寄り添うその肩の向こうに見えた保健室の窓……
一つだけカーテンが空いているその奥の様子は、この距離では確認出来なくて……


だけど、見えなくても分かる、小宮山がオレ達をあそこから見ている……
根拠の無い確信から、思わずその肩を押し戻す。


「……先輩?」

「あ、ほら、芽衣子ちゃん、友達、あそこで手、振ってるよん!」


怪訝そうな顔をした芽衣子ちゃんを他の話で誤魔化すと、もう一度、窓の向こうの小宮山に視線を戻す。
だけど、もうそこに小宮山の気配はなくて……複雑な思いのままそっと視線を伏せた。

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