第2章 アルスラーン戦記短編*ハロウィン
「はろうぃん?」
「なんだい?それは…」
少し肌寒くなった季節。
カナヤのいた世界で存在していた、毎年10月31日に行われるちょっとしたお祭りである。
古く遡ると、古代ケルト人が起源と考えられており、もとは秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す宗教的な意味合いのある行事であった。
カボチャの中身をくりぬいてロウソクを立てて作るジャックオーランタンを飾ったり、子どもたちが魔女やお化けの仮装を行い、近所の家を訪れてお菓子をもらったりする風習などがある。
「トリックオアトリート!って言うんだよ。で、お菓子をくれなかったらイタズラするぞーっておどかすんだってさ」
「だってさ、って、カナヤはやったことないの?」
「んー、私があんまり興味なかったからなぁ。どっちかというと盆踊りとか花火の時の屋台の食べ歩きの方が好きだし。異国文化だからかな、馴染まなかったのかもね」
色々と分からない単語が出るも、アルフリードはそんなもんかねぇ、と分かったようなわからないような反応を示す。
「しかし、ちょっと面白そうだな。よし、私たちもやってみないか?」
「えぇー、めんどくさい……」
「出たな、カナヤの口癖」
「うへへ…」
アルスラーンは興味津々、特に、仮装という単語にワクワクしているのだ。
アルフリードもまんざらでもないらしい。
「ねぇねぇ、なんならエラムも誘ってさ、4人でやってみないかい?」
「エラムか…あんまり乗ってくれそうにはないが」
「なんだい女々しいねぇ殿下は。男ならガツンと言ってやんなきゃ、ガツンと!」
拳を構えてグッと力を込めて見せると、アルフリードは待ったナシにエラムを呼びに行くのであった。
残されたカナヤとアルスラーンは、やれやれと計画を立てることにしたのだが、問題は仕掛ける相手だった。
「ナルサスはこういう文化に興味を示しそうだからいいだろう。」
「寧ろ根掘り葉掘り聞かれそうでめんどくさいかも」
カナヤは、その情景がありありと浮かんで少しゲンナリしている。
「ダリューンは……………うん、仮装したの見たら槍が飛んで来そうなんだけど」
「………」
これも想像に難くない。
はぁとため息を同時にすると、ドヤドヤとアルフリードとエラムが部屋に入ってきた。
嫌がるエラムを座らせると、概要をアルスラーンが説明してくれる。