第4章 芽生える感情
【美琴】
『ど、ドキドキするっ…』
私は、赤司さんと手を繋いで、京都の道を歩いていた。
実は、ドイツにいたときは、カトリックの女子校に通っていて、異性への免疫が極端になかった。
兄は3人いるけど、兄弟とは全く違う感覚だし。
『変に思われないように、しっかり歩かなきゃ…』
歩調を合わせてくれているのか、赤司さんは、さっきよりも歩くスピードが遅い。
『気を使ってくれてる…やっぱり、優しい人…』
日本に来るまで、本当は不安だった。
父に見せられたお見合い写真。
両親は受けたくなければうけなくていいと言い、兄たちは大反対。
『この彼が、美琴に会ってみたいと言っているんだよ。家柄は申し分ないけれど、お前が嫌なら断るからね。考えてごらん。』
そう言って、父は優しく頭を撫でてくれた。
まさか自分にこんなことが起こるなんて。
まるで、物語の中みたい。
窓の外を見ると、いつもと変わらぬ石畳の町並み。
このまま変わらぬ日々よりも、飛び出してみよう、冒険してみようとふと、勇気が生まれる。
私に会ってみたいと言ってくれた彼は、どんな人なのか。
『私も会ってみたい……。』
そして、今、写真で見た彼が、私の手を引いて歩いている。
こんなに胸がドキドキするなんて知らなかった。
初めてのこの気持ち。
春のまだ少し肌寒い空気を頬に感じながら、少し前を歩く彼を見つめていた。