第3章 黄瀬がいない校内
【美空】
「おい!卯月っ!!オマエ、黄瀬知らないか?!」
放課後の教室で、昨日の写真データをパソコンでいじっていると、すごい剣幕で笠松くんが入ってきた。
「え?!なんで私に聞くの?!」
驚いてすっとんきょんな声が出てしまう。
「アイツ、今日急に部活休んでんだよ。
仕事があるとか聞いてねぇし…
オマエ、昨日黄瀬と話してただろう?そん時、何か言ってなかったか?」
笠松くんは話しながら私の席まで来た。
私は昨日の会話を思い出して、あっとなる。
「…ごめん。唆したの、私かも…」
「あ?!な、オマエ、どういうことだよ?!」
私は、黙って、部活別・選手別のフォルダーの中から黄瀬くんのフォルダーを開いて見せた。
「昨日の黄瀬くん。…黄瀬くん、明らかに集中してないでしょ?…なんでもそつなくこなすタイプっぽいから、近くにいると分かりにくいんだと思うんだけど…。」
「アイツ、こんな顔して練習してんのか。」
笠松くんは、昨日の黄瀬くんの写真を見て明らかに動揺している。
「このプレーになっている原因を知るために、行ってくるって言ってた。」
「何処に?」
「しらないよ。昨日少し話しただけだもん。」
「そ、そうだよな…」
画面の黄瀬の表情を見て、笠松くんが辛そうにしているので、肩をポンポンと叩いた。
「おつかれ、笠松部長。」
すると、笠松くんは少し力を抜いた笑顔を見せた。
「おう。」