第27章 月明かり
[美空]
南の出窓から、月の光が射し込んでいる。
月明かりの中、私は起き上がる。
涼太は、私の横でぐっすり眠っていた。
目元がまだ少し濡れているので、指でそっと拭ってあげた。
私は、ゆっくりベッドに膝を抱えて座り、涼太の頭を優しく撫でる。
IHの開場で、涼太を見つけて、家に連れてきた。
涼太の振る舞いは、いつも通りなように見えて、全然違ってて。
電車の中で、窓の外を見ているようで、何も見ていない目。
お風呂上がりに見えた、苦しそうな横顔。
私を抱き締めたときの、腕の震え。
きっと、涼太の中で、今日の出来事が燻っているんだと思った。
だって、まだ高校1年生だもんね。
私は、涼太を慈しむように見守る。
まだ1年生。
これから、もっともっと、君は強くなる。
だけど
今は、まだ
ここで、休んで。
私はベッドから出て、服を着た。
そして、作業机の前に座り、静まり返った部屋で、パソコンを開いた。
私は、海常のカメラマン。
涼太がバスケットを頑張るように、私も頑張る。
マウスを操り、私は写真編集をしはじめた。