第23章 無自覚の誘惑
住宅地を2人で歩く。
この辺は閑静な住宅街で、あまり人が歩いていなかった。
「ここだよ。どーぞ。」
美空っちが、家の門前で止まった。
ベージュの煉瓦で、赤い屋根の家。
大きな二階建ての戸建て。
美空っちは黒い柵の門を開けて、俺を待っていた。
「大きいっスね。」
俺は、思ったままの感想を口にした。
「はは、お父さんの仕事場とか、色々あるからね。中は普通だよ?」
美空っちは、苦笑して家を見上げる。
「今、鍵開けるね。…お母さん、今週、温泉旅行行くって居てたから、家の中暑いかも。
しばらく換気しないと…」
美空っちは、玄関の鍵を開けて、扉を開けて中に入った。
俺も美空っちに続いて、家の中に入る。
玄関に入って、右側の壁に、大判の風景写真が品よく飾られていた。
「すごいっスね。これ美空っちが?」
俺用にスリッパを出していた美空っちが、俺を見て苦笑した。
「まさか。これはお父さんの写真。世界中飛び回って、撮影してきた写真の一部が、飾ってあるの。」
そういって、俺の前にスリッパを置いてくれた。
俺はスポーツバックを玄関脇にそっと置き、靴を脱いだ。
「お邪魔しますっス。」
「はい、どーぞ。いらっしゃいませ。」
お互いに挨拶をして、少し笑う。
そして、リビングに通された。
「…全然普通じゃないんじゃないっスか?ってか、デカくない?!」
驚いている俺を尻目に、窓を開けた後、美空っちはキッチンでお茶を用意してくれていた。
「そんなことないよ。まぁ、リビングは、お母さんのこだわりで少し大きいけど、隣の和室は、小さいよ?」
あまりに俺が驚いて、キョロキョロしているので、美空っちは苦笑していた。
そして、お盆でお茶を運んで、テーブルに置く。
「そんなところ立ってないで、こっち座って?」
美空っちは、お盆を抱えて、笑っている。
「あ、そうっスね。じゃあ。」
俺は、ソファに腰かけた。
『実は美空っちって、お嬢様なんじゃ…』
俺は、ぼーっとそんなことを考えてると、いつのまにか、美空っちが前に座っていて、俺の足を持ち上げていた。