第9章 ライバル、梟谷学園
「凪沙ちゃん、困ったことあったらいつでも連絡してきてねー。マネージャー同士情報交換しよ。」
梟谷のマネージャーにも優しい言葉をもらって、凪沙はぱっと笑顔になる。
「ありがとうございます!」
「木兎はじめ、うちの連中が失礼なことしたら遠慮なく言ってね。私が責任もって絞めとくから。」
彼女は冗談ぽく笑って、それから……と、凪沙の耳元で小さくささやいた。
「あと、赤葦のこと気に入ったなら協力するよ。私もあいつのことからかって遊びたいからさ。」
「いやいや、そんな……。」
「え、ちがうの?赤葦はまんざらでもなさそうだったけど。」
「赤葦くんみたいなイケメンで良い人、今まで出会ったことがなかったからちょっとびっくりしただけです……。ほんとに。」
凪沙が困ってうつむくと、そっかそっか、と彼女は凪沙の頭をなでた。
「かーわいい。じゃあ、私は夜久くん狙ってるから、よろしくね。」
「え。……え!?」
驚いて声が裏返ってしまった。彼女を見上げると、
「なんてね、冗談!ほんと、かーいいね、凪沙ちゃん。」
口あいてるよ、と指摘して、彼女は笑っていた。
(白福さん、いい人なんだろうけど……ちょっと変わってると言うか、つかみにくい……。)
彼女に合わせて笑いながら、凪沙はそう思った。
「おーい、凪沙。そろそろ行くぞー。」
衛輔の声がして、凪沙はほっとしてそちらを向く。
「今いくー!あの、今日はありがとうございました。」
「はいはーい。きをつけてね。」
手を振って白福と凪沙は別れた。
(うーん、無自覚なのかな。でも赤葦より夜久くんにいい反応したなあ。ちょっと意外……。でもおもしろーい。)
凪沙の小さな背中を見送りながら、白福は小さく笑った。