第2章 ファーストコンタクト
再び廊下に出ると、同じくトイレから出てきた衛輔と鉢合わせた。
「あ。」
「よう。」
彼は濡れた手で軽く挨拶し、ズボンで拭こうとする
「これ……。」
凪沙が思わずタオルを差し出す。
「あ、いいの?ありがと。」
それを受け取って、衛輔はお礼を言う。
凪沙は黙って元来た道を戻る。
(一人になりたかったのに……。)
そう、少し残念に思っていたら、またしても衛輔は話しかけてきた。
「ねえ、これどうなってんの?すごいね。」
凪沙の綺麗にセットされた髪を指差している。
「ママがしてくれたの。今日みたいなお出かけの時はやってくれるんだ。」
少し笑顔を見せた凪沙に、衛輔は調子を掴んだように質問する。
「広子さん、美容師だもんな。この花は?ちょっと取れそうだけど平気?」
「これは偽物のお花。ピンでとめてるの。取れそう?」
凪沙は、さっき飛び跳ねたからかな、と思いながら手を伸ばして花飾りの位置を確認する。
「へー。白い花似合うな。肌も白いからかな?」
その言葉に、凪沙は急に表情を硬くする。
「どうかな……。もう戻ろう。」
凪沙は衛輔の手からタオルを奪うと、早足で歩きだした。
(俺何かまずいこと言ったかな。)
衛輔は困惑して頭を掻いた。