第8章 人見知り同士
「凪沙、大分慣れてきたけど研磨とはあんまりしゃべんないよなー。」
部室で荷物をおろし、着替えを始める。
「研磨、クラスの女子から気持ち悪がられてるからな。」
山本が鞄からジャージを取り出しながら言うと、孤爪は
「トラうるさい。よけいなこと言わないでよ。」
と迷惑そうな顔をした。
「でもナギスケは部活見学の時から研磨のこと見直した風なこと言ってたけどな。」
黒尾がすかさずフォローする。
「……気のせいだと思うよ。俺あの人とほとんど口きいてない。」
「まあ、凪沙も人見知りするというか、初対面の男全般に敵意剥き出しなところあるからなー。」
衛輔は出会ったころの凪沙のことを思い出した。
「へー、夜久にも最初は厳しかったんだ。」
「最初の頃はな。懐けばかわいいよ。生意気だけどな。
それ考えたら、1年生たちは凪沙に打ち解けるの早かったなー。」
同じ部室内で着替えている犬岡、芝山、リエーフを見遣る。
「え、そうですか?凪沙さん全然話しやすいですよ。」
「俺、部活後によくお菓子もらってます。」
「高いとこの荷物取ってあげたりすると喜んでくれますし。」
三人は顔を顔を見合わせて、ねー、と笑い合った。
「マジか。研磨、あいつらみたいに人懐こくいけばなっちゃん心開いてくれるかもよ。」
「クロしつこい。別にいいよ……。」
「じゃあ、俺が人懐こくしてみるというのはどうでしょうか。」
真顔で山本が相談してくると、黒尾は「その発想はなかったわ。」と唸る。
「山本のことはマジで怖がってるからやめろ。
モヒカンヤンキーとは関わりたくないとまで言ってる。」
夜久が本気の口調で言うので、山本は膝から崩れ落ちた。
「猛虎さん、大丈夫ですか!?」
「犬岡……俺はもうだめだ。せっかく念願の女子マネージャーが入ったのに、
俺は一言も口をきく前に拒絶された、この先いったいどうす……。」
「犬岡ー、相手しなくていいぞ。早く準備しろー。」
「あ、うっす!」
「……。」