第7章 新生活
「正直、絶対断られると思ってたからさー。」
帰り道、衛輔と凪沙はみんなと別れて並んで歩いていた。
「私もそのつもりだったんだけどね。」
「もしかして、気になる男でもいたか?」
日が落ちて寒くなってきたので、衛輔はジャージの前を閉めた。
「バカじゃないの。」
本気でやめて、と凪沙は頬をひきつらせた。それから、
「男の子ってさ、小学校のときの意地悪で乱暴でうるさいイメージしかなかったんだよね。」
凪沙は歩いている自分のローファーのつま先を見つめながら口を開く。
「でも今日は、なんかちょっとだけそういう先入観みたいなものが、変わったかも。」
「そっか。凪沙は今まで同年代の男の子がいない環境だったもんなー。」
衛輔がポケットに手を突っ込んで何気なく空を見上げると、明るくなり始めた月が見えた。
「バレーしてるみんなはかっこよかった。
男の子って大きいしうるさいしやっぱりちょっと苦手だけど、かっこよくて優しいかもって思ったよ。」
それから彼女は笑顔で衛輔を見上げて言った。
「衛輔、家帰ったらバレーのこと教えてね。」