第7章 新生活
「あのさ、凪沙は凪沙じゃんか。昔何があったとか、そういうの全部ひっくるめてお前なんだよ。
それでいいじゃん。こだわるのやめろよ。
正直、遠慮とか同情とかあったけど、俺そういうの全部やめるよ。」
掴まれた腕の力が抜けた。代わりに凪沙は唇をきゅっと噛んだ。
「無理に忘れようとか考えないようにしようとか、そう言うこと自体が囚われてるってことなんだよ。
もっと自然に、消化していく方が楽になるんじゃねえの。」
「そんなの、むり……。」
「俺はそう思うって決めたから。」
自信なく声を絞り出した彼女を遮って、衛輔ははっきりとそう告げた。
「俺たち片親だけどさ、それを不幸だなんて思うか?思わないだろ。
俺は、凪沙と会えてうれしいよ。これから、一緒に住んで、学校通って、毎日すげえ楽しみ。凪沙は?」
「私も、楽しみ。
じゃなきゃ、衛輔と同じ学校行きたいなんて言わないし。」
少し恥ずかしそうに、つぶやいた凪沙の顔を彼は覗き込む。
「よかった。せっかくの新生活じゃん。心機一転しようぜ。だからさ、その顔とか外見とかさ、自分のことをそんなに嫌うなよ。」
そう言って衛輔はにやっと笑った。
「チャラいなあ……。」
凪沙はゆるんだ口元を手で隠した。