第5章 ゼラニウム
「見て見て、衛輔の服ぴったりだよ。」
「うるせー。言っとくけどそれ中学の時のだからな。」
衛輔に借りた部屋着を着て、凪沙は濡れた髪をタオルで拭く。
ピザも食べてお風呂も入って、もう寝るだけだ。
「明日も部活?」
「おう。毎日練習。」
「楽しい?」
「めっちゃ楽しい。」
そう言って笑った顔が本当に楽しそうだったので凪沙もつられて口元が緩む。
「いいね。音駒高校だっけ。強いの?」
「一応全国目指してるからな。3年が引退して、まだまだこれからだけど、絶対強くなる。」
「ふーん……。」
「お、もしかして興味ある?試合見に来るか?」
「行かない。男の子嫌い。」
凪沙はぷいっとそっぽを向く。
「なんだよ。もう俺とは普通に喋ってるじゃん。」
「衛輔は平気だけど、知らない人はやっぱり怖いよ。」
そう言われて、衛輔は恥ずかしいような嬉しいような気持になった。
「髪乾かしてくる。」
凪沙が立ち上がったあとに、ふわりとゼラニウムの香りがした。