第2章 ファーストコンタクト
衛輔の母親は、衛輔が小学校に入ったばかりの春に死んだ。
交通事故だった。
衛輔自身幼かったのであまり覚えていないが、
とにかくバタバタとたくさんの大人がやってきては慰めや励まし、
時には同情の言葉をかけていったことはぼんやりと記憶している。
その中で彼は幼いながらに「お母さんは、もういない。」ということを理解していった。
それからは父と、父の母、つまり祖母との三人で暮らしてきた。
当然おばあちゃん子に育ち、友人にも恵まれ、模範的な健康優良児としてすくすくと成長した。
その祖母も2年前に他界し、現在は父と男二人暮らしで、むさ苦しいながらも仲良く程よく生活している。
特に不満はなかった。母親がいないことに不満を漏らした記憶もない。
ましてやもう高校二年だ。今更自分の生い立ちにケチをつける気も全くない。
なので衛輔は、父親が再婚したいというのなら、
何も反対するつもりはなかった。
むしろそのことが自分にどんな影響を及ぼすのか、
深く考えたことがなかった。
広子の娘、凪沙に出会うまでは。