第12章 敗北のあと
東京地区インターハイ予選二日目。
音駒高校バレー部は、昨年の優勝校に負けた。
誰も泣かなかった。
もちろん全員悔しさはあったが、キャプテンの黒尾が気丈に振舞う姿を見て、
みんななんとなくそのタイミングをなくしてしまった。
それはもちろん、衛輔も同じだった。
マネージャーの凪沙も、公式戦で負けるのは初めての経験で、
選手たちにどう声を掛けたらいいのか、慰めるべきなのか労うべきなのか、全く分からずにいた。
体育館から引き上げるまでに目があったのは、普段一番他人と目を合わせない孤爪だけだった。
(心配しなくていいよ。)
彼の視線に、そう言われているような気がした。