第11章 再会
「そんな怒るなよ。
だってまさか部活のマネージャーが実の父親にストーキングされててかくまうために連れてきた、なんて言えないだろ。」
ドラッグストアで凪沙が歯ブラシや下着を買いたいと言うので、それを二人は店の外で待機していた。
「だったらクロの彼女ってことにすればよかったじゃん。なんで俺を巻き込むの。」
「俺だって母さんから詮索されるのうざいもん。」
孤爪はもはや言い合うのもめんどくさくなって、不機嫌なままスマホをいじり出した。
「研磨は、なーちゃんのことなんとも思ってないの?
女の子とこんなに仲良くなるの初めてでしょ。ドキドキしたりしない?」
孤爪は心底めんどくさそうに黒尾を見上げる。
「犬岡と夜久さんと一緒にしないでよね。」
「え、研磨も知ってるの。」
「夜久さんはともかく、犬岡は分かりやすいから。」
ふーん、と軽く返事をしてから店の方に目をやる。まだ凪沙は出てくる気配がない。
「で、研磨の見解は?」
「……えー、そういうのめんどくさい。」
「そう言うなって、待ってる間の暇つぶしに。」
黒尾がご機嫌で孤爪の言葉を待つ。
(ナギはやく戻ってきてよ……。)
しかし彼女は現れない。仕方なく孤爪は口を開く。
「ナギは、夜久さんにしか心開いてないと思うよ。」
それだけ言うと、今度こそスマホのゲームに視線を落とした。
(研磨はさすがに鋭いな。でも、俺からするとなーちゃんは夜久の次に研磨にも懐いてるように見えるんだけどな。)
口元に手を当てて、にやけた顔をごまかしていると
「言っとくけど、俺はナギのことなんとも思ってないからね。ナギ、目立ってるからなるべくクラスでは話しかけないでって言ってあるし。」
黒尾の心を見抜いたように孤爪は淡々とそう言った。
「あ、そうなの……。」
黒尾が多少がっかりしていると、ようやく凪沙が店からでてきた。