第10章 宮城遠征
「えー!GWの宮城遠征、全員行けるわけじゃないんですか!?」
練習を終えた片付け中の体育館で、リエーフが不満の声を上げた。
「今回はベンチ入りまでしか連れて行かない。それ以外はこっちで通常の練習だ。」
黒尾が改めて説明すると、衛輔も容赦なく厳しい言葉を浴びせる。
「リエーフはまだヘタクソだろ。居残ってレシーブ練習してろ。」
「夜久さんひどいです!」
「事実だろ。」
涙目になったリエーフを犬岡と芝山が慰める。
凪沙がそばを通りかかると、リエーフがかがんで頭を向けるので、彼女はそれをよしよしとなでてあげると
「じゃあせめて凪沙さんもこっちに置いてってください!」
リエーフは凪沙に抱きつきながらそう訴えた。
小柄な彼女はすっぽりとリエーフの腕の中に納まる。
「調子乗ってんじゃねえ!」
「痛いです!暴力反対!」
衛輔に蹴りを入れられ、リエーフは凪沙を離した。
いつもの光景に、もう誰も動じない。
「凪沙もいい加減いやだったらはっきり言えよ。」
衛輔が凪沙の腕を引き寄せる。
「うん。でもリエーフは冗談でやってるっていうのが分かるから大丈夫。」
「じゃあ俺もなーちゃんのことギュッとしよーっと。」
黒尾が凪沙の後ろから腕をまわそうとすると、彼女は急に無表情になる。
「黒尾さんはイヤらしいからやめてください。」
「そいつになにかされそうになったら股間蹴って逃げていいからな。」
「モリスケナギスケは俺に厳しすぎると思います。」