第10章 【第九章】領主の憤り
[ 紫原 * 6年前]
領主になって、初めての舞踏会。
回りの領主もみんな同い年、だけど、俺は皆よりとにかく大きかった。
なんか、貴族の女子は俺を遠巻きにして、何か話していた。
俺は、特に気にならなかったから、大きいテーブルを陣取って、御馳走を食べていた。
そこに、美桜ちんがやってきたんだ。
「敦、私と踊って頂けませんか?」
俺は鶏肉を頬張りながら、話をした。
「俺、踊りとかメンドクサイ。他のやつと踊ったら?」
踊りなんか踊るより、今、目の前の美味しい料理を、満足いくまでとことん食べることが、最優先。
俺は、もぐもぐと口を動かしていると、美桜ちんは、俺に笑いながら言った。
「折角の舞踏会だし。私、敦と踊りたいな。
それに…実は、これから踊るダンス、ロフトがあるでしょ?敦にロフトしてもらいたいな。…お願いっ!」
すっごくメンドクサイけど、向こう側にいた赤ちんが、すごい顔してこっち見てるから、俺は立ち上がって、手を拭いた。
「一回だけだからね。」
そして、美桜ちんの小さい手を引いてホールに来た。
ダンスは、フォークダンス。
俺は、美桜ちんと一緒にステップを踏む。
そして、彼女を持ち上げた。
『軽っ。わたあめか!!』
俺は、あり得ないほど軽い美桜ちんを見ると、彼女はすごい楽しそうに声をあげた。
「わっ!高いっ!!」
美桜ちんのドレスの裾がフワッと開いて綺麗に広がった。
『女子って、綺麗なんだ…。ふーん…。』
ダンスが終わって、テーブルに戻ると、美桜ちんは興奮して、俺に話し掛けてくる。
「敦はすごいね!!ありがとうっ。」
美桜ちんは、笑った。
俺は、その顔は好きだと思った。
けど、今、美桜ちんは捕らえられてるって。
助けようとしたら、殺すって。
なんだよ、それ。
ムカムカが収まらない。
俺は、テーブルに盛ってあったリンゴを1つ掴み、思いっきり握り潰した。
拳から、リンゴの果汁が滴る。
リンゴの涙。
きっと、美桜ちんも泣いてる。
俺は、動くことが出来なかった。