第8章 【第七章】残酷な伝令
領地に帰還してすぐ、オレは笠松隊長たちへ城であった事を話し、出陣準備を始めた。
反乱分子を一網打尽にするため。
そして、三日目。
王都側にある東門に、使者がきた。
桃っちだった。
「っ………、きーちゃんっ!!」
領城の応接間で、桃っちと再会した。
桃っちは、泣きながら胸に飛び込んできた。
沢山泣いたのか、目が腫れていて痛々しい。
「……何があったん…スか?さ、作戦は?…無事、黒子っちは美桜っちと一緒に逃げられたんスよね…??」
嫌な予感しかしないが、思い過ごしを信じて、桃っちの肩を掴んで、こっちを向かせる。
「…美桜姫が…っ…幽閉されて…っテツくんは、美桜を助けようとしたけど……っ……アイツに……アイツにっ、塔から落とされ…っ…。」
語尾を言い終わる前に、止めどなく涙を流して、震えている。
オレは、言われた意味を理解出来なくて、放心していた。
すると、桃っちがゆっくりした動作でショルダーバックから、髪の毛を出した。
「……こ、れは?」
髪の毛を受けとり、桃っちを見る。
この柔らかい手触り。
知ってる。
この栗色の少しウェーブした髪。
知ってる。
これは………
「……美桜姫の髪の毛…っ。……総一様からの伝令を…伝えます。」
「………え……?」
頬に伝う涙をそのままに、オレを見て桃っちは言った。
「“戦う準備は出来ただろう。他国と戦い領土を奪え。逆らえば、姫の首を切り落とす。”…以上です。」
そう伝えると、桃っちは泣き崩れた。
ごめんなさいと、謝りながら。
オレは、手の中の髪の毛を見て、唇を咬む。
笑顔が見える。
城を出立する前にみた。
風に吹かれて、栗色のウェーブした髪が踊る。
あの笑顔。
「………オレは、………大事な人を救い出すことも…出来ないっスか………」
無力な自分に一番腹が立つ。
そして、桃っちは海常から出立した。
これから、オレ以外の領主たちに伝える為。
残酷な伝令を
伝える為。