第3章 兄妹ケンカ 初級編*及川徹
「まぁ言ってくれなくても可愛い妹だから鍵貸したけどね」
「はぁ!?ふざけんな!じゃあやんなくても良かったじゃん!」
華楓は及川の頬を湿布の上から叩いた。
「痛い痛い痛い!このっ!」
仕返しをする及川。華楓の手の甲にある傷口をつねる。
「痛いってのこのバカ兄貴!」
つねってきた及川の手を払って体勢を整えた華楓は及川の脇腹に蹴りを入れた。それを校門から遠目で見ていた岩泉と花巻と松川。
「また始まったな…兄妹ケンカ…」
「怪我しても知らねぇぞ!って言っても聞こえねぇよな…」
「ま、こういう時のお母さんだろ!」
花巻と松川は岩泉の方を見る。その視線を察した岩泉は慣れたように2人に
「そこのバカ兄妹!とっとと帰んぞ!!」
「「誰がバカだって!?」」
「どさくさに紛れてあたしとバカ一緒にしないでよね!」
華楓は岩泉の方に寄ってきて口にした。
「何言ってるのさ。どうせ兄妹なんだから頭の出来なんて一緒でしょ!」
及川がボケて言っているのか本気で言っているのか華楓と岩泉はもうつっこまない。
「俺は華楓の方が出来はいいと思いまーす」
「俺も~」
花巻と松川は調子に乗り出した。
「えっちょっ及川さんの方がいいでしょ?」
「「「いやいやないない!!」」」
花巻、松川、華楓は見事にシンクロした。それに続けて岩泉が口を開いた。
「というか華楓とお前は兄妹じゃねぇだろ従兄妹だろ?」
「あ、そっか」
今更感ありありの岩泉の言葉に納得する及川だがその言葉とは裏腹に華楓は
「まぁどっちにしろ兄妹みたいなもんだから変わんないけどね」
「そーだね」
及川が言うと2人は無邪気な笑顔になった。そしてお互い手の甲を合わせた。
「馬鹿っ痛いわ!!」
「今のは俺のせいじゃない!!!」
これは1人の少女と兄のどうしよもない争いの話の初級編。
End