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 『さよなら』の先に  【Ib】

第13章  私の願い  二人の想い *番外編*


 私が目覚めたのは、五年前なのか、十年前なのか、はたまたそれより前なのか――今の私は全く覚えていない。目覚めた場所が薄暗かったことだけは覚えている。

「やぁ、おはよう。メアリー」
 目覚めた私の前に立っていたのは、一人の男だった。
「メ……アリ……?」
「あぁ。それが君の名前だ。そして私は君を産んだ親――ゲルテナだ。親しみを込めて『お父さん』とでも呼んでくれ」
「お父……さん」
 私の親と名乗った男――お父さんは、

 自分が芸術家であること。
 ここはお父さんが作った作品達の世界で、私もその一人であること。
 ここから出て行きたければ、外のニンゲンと入れ替わらなければならないこと……

 その他にもたくさんのことを私に教えてくれた。

       *

「お父さん。他の作品って、どんなのがいるの?」
「知りたければ見に行けば良い。ここにいる物は皆、お前の兄と姉だ。ちょうど良いから挨拶にでも行って来ると良い。私はここで待っているから」
「……道が分からないよ」
 そう言うとお父さんはフッと笑い、
「あぁ、そうだったな。ならば一緒に行こう。おいで」
 ゴツゴツした手を差し出した。
 私も手を差し出すと、お父さんは私の手を握って道案内をしてくれた。お父さんの手は冷たかった。

 赤い服のお姉ちゃん。
 頭の無いお姉ちゃん。
 逆さまのお兄ちゃん。

 お父さんは、たくさんのお兄ちゃんとお姉ちゃんと絵を紹介してくれた。
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