• テキストサイズ

 『さよなら』の先に  【Ib】

第10章  後悔


「…………ウソ、でしょ……?」
 美術館にたどり着いた私は、門の前で立ち尽くしていた。
 その門には鈍く光る鍵と、黒の門に似合わない白い紙が貼ってあった。
 紙にはこんな事が書いてあった。

『現在この美術館は、建物の改装及び修理のために閉館しております。皆様には多大なるご迷惑をおかけしますが、何卒、ご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。 館長』

 その下には、工事の日程と工事修了予定の日付が書かれてあった。それは今から四年後のものだった。

 知らず知らずのうちに涙があふれてくる。一度出てしまうともう抑えが効かなくなり、私は門の柵を握りしめながら泣いた。


 私はこの両手からこぼれそうなほどの思い出をもらった。楽しいものばかりではなかったけれど、とても大切なものだ。
 なのに、何も恩返しが出来ていない。最後の最期まで迷惑ばかりかけてしまった。
 あなたは優しいから、きっと気にするなって言うだろうけど……。


 ねぇ、神様。もし居るなら、私の願いを叶えて下さい。
 たった一度で良い。
 他には何も望まない。
 だからもう一度だけ……。

「……会いたいよ…………ギャリー……」
/ 82ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp