第1章 プロローグ
――ある日の午後
「イヴ! 準備出来た? 忘れ物、無い?」
「うん。大丈夫だよ、お母さん」
「ハンカチは? ほら、誕生日にあげた……」
「……大丈夫。ちゃんと持ったよ」
ほら! と言いながら、お母さんにハンカチを見せる。
「なら良いわ。落とさない様にね!」
そう言って私の頭を撫でた。
「準備は出来たかい? そろそろ行こうか」
ドアを開けながら、お父さんが顔を出す。
「「は~い」」
お母さんと同時に返事をして、家を出た。
「イヴ、今日行くのは『ゲルテナ』と言う人の作品展よ」
移動中、お母さんが話し掛けてきた。
「ゲルテナ?」
「そう。絵だけじゃなくて、彫刻の作品とかもあるらしいから、きっとイヴでも楽しめると思うわ♪」
「そっか……楽しみだなぁ……」
そんな会話をしていると、
「もうすぐで着くよ」
と、お父さんから声が掛かった。その声に反応し、ふと、顔を上げると目の前に立派な美術館が姿を現した。
(大きな美術館だなぁ……)
――この美術館であの事件に巻き込まれる事になるとは、この時の私はまだ知らなかった――。