第1章 1話
及川side
俺には彼女がいる。
とても可愛くて俺のことをよくわかってくれるいい子だ。
マネージャー業もしっかりこなしてくれて、よく気が利くしっかりした子。
そんな彼女が、俺は大好きだった。
「徹ー。宿題はやった?」
「…寝ちゃってやってないや」
「もー、馬鹿じゃないの?今回は何があっても見せないからね」
「望美ちゃーん!!お願い!今日当たる確率大きいんだよー!頼むぅぅ」
昼休み。
昼を食べながら望美にお願いをする。
次の時間にやる数学の宿題をやってないのだ。
生憎、今日は出席番号と日にちが同じ数字。まったく、教師というものはなぜこうも単純なんだ。
「この前も見せたじゃない。その時、次は自分でやるって言ってたでしょ?」
「うぅ…望美、お願い?」
望美は頑固で真面目。でも優しいから“お願い”すれば最後は許してくれる。
ほら、ノートをくれた。
「ありがとー!!望美ちゃん大好き♡」
「うっさい、きもい。今回だけだからな。」
照れ隠しなのか、卵焼きを口に放り込み窓を眺めながら咀嚼している望美。
望美は照れた時目をそらす癖がある。
望美の事はなんでもわかるし望美も俺の事はなんでもわかる。
今の所、望美に隠し事なんかしてないし、されてない自身もある。
もう、運命の人だよね。
こんな理解者他にいないよ。
……でも、俺は望美の事を理解している“つもり”だったのだ。