第3章 客【ミヨ】
渋谷は
自分の仕事のシーツを
片付けながら静かに言った
渋谷「もう一人に見つかりたくないんやろ?」
ミヨ「.......」
渋谷はシーツを
高い棚に直しながら言った
渋谷「同じ顔でも性格は違うんやな....」
その言葉に
ミヨは震える声で答えた
ミヨ「私は、影なんです.....」
渋谷は、静かに聞いていたが
冷たく言い放った
渋谷「自分がそう思ってたらそうやろな」
ミヨ「えっ?」
ミヨは感じていた
この人は全てを知っている
なぜ知っているかは分からないが
知っているのだと
渋谷「自分が強くなろうと思わんと
絶対になれんもんやで
人の力を借りては
やっぱり借りもんやから」
ミヨは俯いてしまった
渋谷「その命、大事にしろよ」
ミヨは驚いて渋谷を見ると
渋谷の瞳が薄く赤になった
気がしたのだ
渋谷「お前の顔には生気が感じられん
死に取りつかれたら終わりやで」
そう冷たく言うと
また新たなシーツの束に
取り掛かったのだ
ミヨは、渋谷が怖くなり
頭を深々と下げると部屋を急いで出た
すると
廊下に出た時に丸山にぶつかったのだ
丸山「おっと、大丈夫ですか?」
ミヨは驚いた顔をしたが
丸山の笑顔に少しだけ安心した
ミヨ「こちらこそ
すいませんでした」
丸山「もうすぐ食事の時間ですので
部屋で待ってて頂けますか?
係りの者がお呼びに行きますので」
そう言うと
部屋まで案内する為に
丸山は歩き出した
ミヨは
丸山の後ろを歩きだしたが
ある事に気が付いた
ミヨ「....影が」
その言葉を聞いて
丸山はニッコリと微笑むと
丸山「このホテルの明かりは
蝋燭なので角度とかで
影が見えない時があるんですよ」
丸山の言葉にミヨは
安心したように微笑んだ
そして
また歩き出した
丸山の瞳が深紅に変わったのには
気が付かなかったのだ
ミヨは
丸山に案内されて部屋に
大人しく戻って行ったのだった