第9章 記憶の欠片
西谷side
俺はあいつに何もする事が出来なかった
幸駕兄さんや両親達が交通事故にあったのを知ったのは学校に行ってから
親は何も教えてくれなかった,きっと俺が苦しむと思ったのだろう
すぐにあいつの傍に行こうとした,だけどその日にはもう葬式だった
葬式に行ってあいつを見かけたから声を掛けようとしたけど俺は声を掛けることが出来なかった
まるで他人の葬式に来てるみたいに振る舞うあいつが怖かった
そして,学校に来たあいつを改めて見て思ったんだ
本当に記憶喪失なのかもしれない,と
俺の事はいつも'ゆ-'と満面の笑顔で呼んでくれた
バレーも,勉強も何でも一緒にやった
あいつが一番辛い時に居てあげれなかった
俺は色々あり自宅にいなければいけなくなったが
あいつの家にいつも上がり込んでは話をした
生きててくれただけでも良かったんだ
でも薬も見つけてしまった
何かの病気かと焦ったが
何かきっかけがあり思い出そうとしたりバレーを見たりすると症状が出てしまうらしい
また,あいつの辛い時にすぐ傍に居れないと思うと悔しかった
何とか敬語なしで話してくれる様にまでになったけど,まだあの笑顔は見れてない
そしてあの呼び方も呼んでもらえない
でも良いんだ,あいつが傍に居てくれるだけで
例え記憶を取り戻さなくたって
今度は必ず俺が守ると誓ったんだから