あなたの声が聞きたくて【another story】
第7章 岩泉一【番外編】3
「それでは指輪の交換をしてください。」
手袋とブーケを介添人に渡してはじめに向き合えば照れ臭そうにはにかんだ。
「ドレス似合ってんじゃねーか」
「それ今更言う?」
「しゃーねーべ。綺麗すぎて直視出来なかったんだからよ。」
拗ねるように尖らせた唇。
その癖昔から変わらないね。
「ふふっ、」
「笑ってんな、おら、手ぇ出せ」
司祭さんから指輪を受け取り、私の指に嵌めようとする。
「はじめ手震えてるよ?」
「うっせぇ。緊張してんだよ。」
バレーによってゴツくなった手が触れ、小さなダイヤの輝く指輪は私の左手の薬指におさまった。
「それでは新婦も。」
「はい。」
手に取った私のより1回りくらい?大きな指輪。
突き指で関節の太くなった彼の指にはこれくらいじゃないと入らない。
「はじめ、手出して?」
「ん。」
「ちょ、手汗かいてる」
「るせぇな、黙って嵌めろよ」
神聖な式でさえ私達はいつも通り。
もう、笑われちゃったじゃない。
私よりずっと大きくて太い指に私と同じ指輪が綺麗におさまった。