第21章 限界ボーダーライン
「私なんか男子バレーのボールは片手じゃ掴めませんよ?」
私は指だって短い。
ピアノで一オクターブ先に指が届かない程に。
だから辞めた。水かきを切る情熱は私にはなかった。
一一でも私はピアノが好きだったのだ。
思い出すと何だか感傷で胸でむず痒くて、トビオちゃんの指に手を這わせる。
「つむぎ…」
トビオちゃんは泣き止んでいた。
良かったな。
手を離し、壁際に戻る。
「飛雄、どいて」
及川先輩が来た。
「つむぎは岩ちゃんが好きなの?」
「好きです」
「オレは?」
「好きです」
私の答えにはあーっと重いため息をつき及川先輩は私に視線を合わせてくる。
「それって罪深い答えじゃない?」
つみ、ぶかい?
「それが罪なら罰を与えますか?」
私は両腕を差し出した。
昔見た宗教画の様に。
罪を侵した徒は教師に鞭で手を叩かれるのだ。