第2章 薔薇の花嫁
「いやでも木原泣いてるし」
「もう泣きません!」
私の言葉に二人は顔を見合わせ、国見くんが頷くと金田一くんがため息をつく。
そして一一かぱっと二人の口が開き、その唇の裂け目から白い牙が見えた気がした。
二人が唇を手首に寄せる。
ツプリ、と案外軽く歯列は皮膚を突き抜いた。
一瞬鈍い痛みがした気がしたけれど、それ以上にえにもいわれぬ快感が私の体を突き抜けた。
じぐっと牙が穴をえぐり、血を吸い出す。
血液が穴に集まるその感触がたまらなく甘美で体がゆるまりそうになる。
弛緩して手放しそうになる意識を必死に手繰り寄せた。
けれどそうすればする程…
「ひ、ゃ。な、に、これ?」
口からあられもない変な声が出た。
じゅっじゅっと液体をすする音がするたび、神経の糸を直接くすぐられるようなこそばゆい気持ちよさが体をめぐる。
「あっ、ひんっ、ンんッん、はぁん」
自分の声だなんて思いたくないひどく甘い声。
与えられる快感を享受する聲一一。